化学繊維のナイロンは石炭と空気と水でできている

1937年(昭和12年)、世界初の化学繊維ナイロンが発明され、翌年に発売された時の宣伝文句は、「石炭と空気と水から作られた、クモの糸より細く鋼鉄より強い繊維」だった。

後半は誇張だが、前半は事実で、発明者であるアメリカのデュポン社のウォーレス・カロザース(1896~1937)は、本当に石炭と空気と水からナイロンを作っている。まず、彼は石炭の一種であるコークスの炉から得られるベンゼンを原料に、何段階かの工程を経て、空気中の酸素と窒素を用いた酸化還元反応により、ヘキサメチレン-ジアミンとアジピン酸という2種類の化合物を作り出した。この2種の化合物を合成して、ナイロンが誕生したのである。発売後まもなく、ナイロンは絹に代わるストッキングの素材として、すごい勢いで普及したのだった。ナイロン(nylon)の名称は、「伝線(run)しないパンティストッキング用の繊維」を意図した「norun」に由来する。

しかし、カロザースは若い頃からうつ病を患っていたことと、妹が死去するという不幸も重なり、青酸カリを混ぜたレモンジュースを飲んで自殺した。ナイロンは綿から合成繊維への転換をもたらす世界的な発明であったが、死亡した当時、ナイロンはデュポン社の企業秘密であったため、功績の大きさにもかかわらず、カロザースは無名のままこの世を去った。2000年(平成12年)11月にアメリカ科学振興協会はカロザースを表彰した。

2016/10/6

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カテゴリー「生活・科学

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