「鯥」(むつ)の名前の由来

ムツは、スズキ目ムツ科に分類される魚の一種。体長60cmほどの肉食性の大型深海魚で、水深300~500mの岩礁域に生息し、食用に漁獲される。幼魚のときは内湾近くにいて、成長するにつれて沖の深海へと移動する。ムツの幼魚を「オンシラズ」と呼ぶ地方がある。これは親と離れていくから「恩知らず」という意味である。

「ムツ」の名前は「陸奥」に由来する説がある。ムツは東北から九州まで分布するが、陸奥の国では珍しかったので「ムツ」という名前が付けられたという。ところが仙台ではムツのことを「ロクノウオ」と呼ぶ。江戸時代、仙台伊達藩主は代々陸奥守むつのかみであったため、「むつ」と呼ぶのをはばかって、「ムツ」を「六」に替えて、そう呼んだという。他にも、「ムツ」は方言で「脂っこい」を意味する「ムツコイ」に由来する説もある。

漢字の「鯥」は魚へんに「坴」を組み合わせたもので、中国にもこの漢字があり、本来、体は牛に似て、蛇の尾と翼を持ち、陸に棲むという伝説上の怪魚を意味する漢字である。他にも、上記のように「陸奥」に由来し、「陸」のつくりを取って、魚へんを付けて「鯥」が生まれたとする説もある。

このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリー「魚へん漢字の由来

関連記事