「心臓に毛が生えている」とは、あつかましい、ずうずうしい、度胸のある、怖いもの知らずなどの意味で使われる言葉である。
毛が生えた心臓
画像元:日本心臓財団
「心臓に毛が生えている」という表現は比喩で、実際には心臓に毛の生えた人はいない。このような言葉が生まれたのは、江戸時代に使われていた「肝(きも)に毛が生える」という言葉に由来するとされている。肝(肝臓)は、「肝が据わる」「肝っ玉」と使われるように、度胸や勇気、精神力などの象徴とされていた。
「肝に毛が生える」という言い方が「心臓に毛が生える」へと変わったのは、比較的新しく、昭和になってからのことである。「肝臓」ではなく「心臓」になったのは、西洋流の思考法が定着して、心臓を「心」の象徴的根源と見なすようになったことに由来すると推察される。
また、毛が生えている皮膚は生えていない皮膚に比べて丈夫で強い印象があるため、「毛が生えた心臓」が仮にあったとすれば、それは「丈夫で強い心臓」であろうと想像される。そこから、「あつかましい」「ずうずうしい」を意味する「心臓が強い」や、「度胸があること」を意味する「強心臓」の比喩表現と合わせて、現在のような意味を持つようになったと考えられる。
2017/11/29
カテゴリー「語源・由来」