「キネマ」と「シネマ」は、両方とも映画または映画館を意味する言葉である。
映画館
画像元:あべのアポロシネマ
映画を観る装置を最初に発明したのはアメリカの発明家・起業家のトーマス・エジソン(1847~1931年)で、一般的に広まった「キネトスコープ」(英語:kinetoscope)を1891年に発明した。名前はギリシア語の「kinematos」(動き)に由来する。
これは今のようにスクリーンに映し出すものではなく、箱の中を覗いて観るものだった。1893年にシカゴ万国博覧会に出展し、1894年4月14日にはニューヨークのブロードウェイ1155番地に世界初の映画館(キネトスコープ・パーラー)が設置され、キネトスコープは世界的に大ヒットした。
また、撮影機の方は「キネトグラフ」(英語:kinetograph)といい、キネトスコープより先に、同じくエジソンが発明した。
エジソンの開発したキネトスコープを改良したのが、フランスの映画発明者で「映画の父」と呼ばれるリュミエール兄弟だった。1894年、リュミエール兄弟の父・アントワーヌはパリでキネトスコープを目の当たりにした。父の勧めで兄弟は動画の研究を開始。一度に多くの人々が鑑賞できるようにスクリーンに投影する「シネマトグラフ」(フランス語:cinématographe)を1895年に発明した。
リュミエール兄弟が発明した「シネマトグラフ」が略されて「シネマ」(cinema)という言葉が誕生した。また、同様に映画のことを英語で「キネマトグラフ」(kinematograph)といい、「キネマ」(kinema)はその略である。
第二次世界大戦前の日本では、映画のことを「活動写真」あるいは「活動」と呼ぶのが一般的であったが、次第に「キネマ」「シネマ」とも呼ばれるようになった。しかし、大正時代の当時「シネマ」は「死ね」に通じる忌み言葉として嫌われたため、「キネマ」が定着した。
昭和になった頃から「シネマ」という言葉も使われるようになった。そして、今日では一般に「キネマ」「シネマ」という言葉はレトロ(懐古)趣味から使われる。
フランスでは「シネマ」(cinema)は映画を意味する語で、口語では映画作品を「フィルム」(film)と呼び、「シネマ」は映画館を意味する。
アメリカではアート作品を「シネマ」と呼び、娯楽作品を「ムービー」(movie)と区別して呼ぶ傾向がある。また、映画を「モーション・ピクチャー」(motion picture)、映画館を「ムービー・シアター」(movie theater)とも呼ぶ。
2017/12/19
カテゴリー「語源・由来」