日本のサザエには2017年まで学名がなかった

アニメの『サザエさん』にも少し関係する貝のサザエについてのお話である。

いろんな動物には学名がちゃんと付いていて、人間の学名はホモ・サピエンス・サピエンス(Homo sapiens sapiens)、ニシローランドゴリラの学名はゴリラ・ゴリラ・ゴリラ(Gorilla gorilla gorilla)などである。

サザエには日本のサザエと中国のサザエが存在し、中国のナンカイサザエには約230年前の1786年にイギリスの生物学者ジョン・ライトフットがトゥルボ・コルヌトゥス(Turbo cornutus)と命名した。その後、日本のサザエが発見され、中国のナンカイサザエと同じ貝とされて、同じ学名が付けられていた。

日本産サザエ(有棘型)
日本産サザエ(有棘型)
中国産ナンカイサザエ(有棘型)
中国産ナンカイサザエ(有棘型)

しかし、同じに見えていた2つのサザエは似ているが違う種類だと分かり、慌てて日本のサザエに学名を付けようとした。この時に大きなミスをしてしまい、中国のナンカイサザエにもう1つ別のトゥルボ・チャイネンシス(Turbo chinensis)という学名を付けてしまった。これにより、ナンカイサザエには2つの学名が付き、日本のサザエには学名がない状態がずっと続いていた。

日本のサザエに学名が無い事に気付いたのが岡山大学の貝類分類学者である福田宏准教授だった。そのきっかけは日本のサザエとされていた原典のスケッチが明らかに中国産の特徴を備えており、産地も「中国」と書かれていた事であった。そして、福田先生が日本のサザエに初めてトゥルボ・サザエ(Turbo sazae)という学名を命名し、2017年(平成29年)5月16日に国際学術誌に掲載されて正式名となった。

福田先生が命名した事から日本のサザエの学名はトゥルボ・サザエ・フクダでもあり、濁点が1つずれていれば、アニメ『サザエさん』の主人公・フグ田サザエ(フグた サザエ)になる所だった。

発見した福田先生は「こんな身近な貝に名前がなかったとは思わなかった」と驚くと共に、「貝の分類の専門家としては今の今までサザエすら正体をハッキリさせられていなかった事に対する分野の無力さを感じ、これを反省材料にすべきである」と語っている。

引用元岡山大学朝日新聞デジタル

2017/12/28

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カテゴリー「生き物

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