人間の足首は90度と直角なのに対して、なぜか靴下は直角ではなく135度(または120度)と開いた形をしている。
一般的な靴下
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そもそも昔の人の靴下の角度は何度なのか。1560年にエリザベス1世(Elizabeth I、1533~1603年)が履いていたという手編み靴下の足首の角度は90度であった。
そして、1600年代に水戸黄門(徳川光圀、1628~1701年)が履いていたという日本で最初の靴下(複製品)は135度である。
水戸黄門の靴下
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もともと90度だった靴下が135度になったきっかけは、手編みから機械編みへの製造方法の転換によるもので、手編みの時は90度だったが、それが機械化されて135度になった。
1589年にイギリスの牧師ウィリアム・リー(Willam Lee、1563~1610年)が手編みで苦労する妻のために手動の編立機械を開発した。これをきっかけに機械編みが世界的に普及し、靴下は135度になっていった。日本最古の靴下といわれる水戸黄門の靴下が135度ということは、日本に入ってきた時にはすでに機械生産されていたことの証しでもある。
なぜ機械で作ると135度になるのか。それは工場で大量生産するには90度よりも135度のほうが都合が良かったためである。
靴下は機械で編む時、吐き口部分から回転しながら筒状に編んでいく。そして、かかとの部分は筒状の半分だけを往復で編む。かかとを編み終わるとまた回転してつま先まで筒状に編んでいく。この製造工程の中で最も手間なのが往復編みのかかと部分で、ただの回転編みに比べて往復編みは作業スピードが半減する。
90度の靴下を作ろうとすると、往復編みをするかかと部分の面積が増えて、編む時間も長くかかってしまう。靴下を機械でより多く生産するためには、かかと部分の少ない135度の靴下が最適だった。つまり、靴下が135度である理由は、機械化による生産効率を考え、かかと部分を小さくしたためである。
現在では、無印良品などで90度の靴下が製造・販売されており、直角の靴下はかかとにフィットして履き心地が良いと評判になっている。
足なり直角靴下
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2018/1/21
カテゴリー「生活・科学」