ノーベル賞をセロハンテープと鉛筆で受賞

ノーベル賞はその歴史と伝統などから世界的に権威が高い賞とされる。そのノーベル賞をセロハンテープと鉛筆だけで受賞した人がいる。

2010年(平成22年)にノーベル物理学賞を受賞したのは、イギリス・マンチェスター大学のアンドレ・ガイム(Andre Geim、当時51歳)とコンスタンチン・ノボセロフ(Konstantin Novoselov、当時36歳)の二人の博士である。

彼らの研究はとてもシンプルで、鉛筆の主成分である黒鉛をセロハンテープの上に載せる。そして、セロハンテープをくっつけて剥がすという作業を何度も繰り返す。そのセロハンテープをシリコン基板に押し付け、ゆっくりと剥がす。以上である。

そのシリコン基板には薄い膜が残り、それが革新的な素材「グラフェン(graphene)」である。グラフェンは、「ダイヤモンドよりも硬く、この世に存在する最も薄い物質」と表現される。

グラフェンの分子構造モデル
グラフェンの分子構造モデル

グラフェンは、ダイヤモンド以上に炭素同士の結合が強いため、ダイヤモンドよりも硬い。そして、その厚さは炭素原子1個分である。グラフェンは、炭素原子がシート状に結合した物質で、蜂の巣のような六角格子構造を形成する。

グラフェンの名前は、炭素から成る元素鉱物「グラファイト(graphite)」に由来する。このグラファイト自体もグラフェンシートが多数積み重なって出来ている。また、グラフェンは、熱伝導も世界で最も良いとされ、電気の伝導度もトップクラスに良い物質である。

これらの性質から太陽電池や充電式電池、大容量コンデンサ、タッチパネルなどへの応用が期待され、新素材として注目されている。そんなグラフェンは、50年以上前からその存在が予言されていたが、安定した精製方法が見つかっていなかった。

上記の二人の博士はセロハンテープと鉛筆に含まれる黒鉛だけを使って簡単にグラフェンを取り出し、グラフェンの精製方法を発見したということが、ノーベル賞を受賞した理由の一つである。

グラファイトは、グラフェンシートが積み重なって出来たものだが、グラフェン同士が結合力の弱いファンデルワールス力によって上下に結び付き、層を形成しているため、セロハンテープの粘着力で剥がすことでグラフェンを得ることが出来た。

リンクWikipediaコトバンク

2021/1/11

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カテゴリー「生活・科学

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