お茶を淹れるとホコリのようなものが浮いている時がある。「ホコリ」と書いたが、それはホコリではなく「毛茸(もうじ)」と呼ばれるものである。
毛茸とは、新芽の時にだけ生える産毛のようなもので、冬の間ずっと養分を蓄えていたことの証拠。このホコリのような毛茸が浮いているお茶は、柔らかい新芽を使った最も美味しいお茶である。このお茶は「一番茶」と呼ばれ、「二番茶」「三番茶」と比べて、うま味が多く、香りが高く、最も品質がよいとされる。
毛茸は柔らかい新芽の裏側にあり、成長して葉が硬くなると次第になくなる。この毛は専門的には「トライコーム」(trichome)と呼ばれ、「毛状突起」と訳される。長さは植物により異なるが、植物を強い日差しや害虫から守ったり、強風時には水分が蒸発するのを防ぐなどの役割がある。この毛茸をただのホコリと勘違いした人がお茶を返品しようとしたというエピソードもある。
リンク:和茶倶楽部、静岡茶通販ドットコム、日本植物生理学会
2019/5/20
カテゴリー「食べ物」