広い空間に人がいない状況や部屋に物がない状況を「がらんとしている」と表現するが、「がらん」とはどういう意味なのか。
「がらん」とは「寺院のお堂」のことである。「がらん」は漢字では「伽藍」と書き、これは仏教の言葉の「僧伽藍摩」(そうがらんま・そうぎゃらんま)を略したものである。そして、「僧伽藍摩」とは古代インドのサンスクリット語の「saṃghārāma」(サンガーラーマ)に漢字を当てはめたものである。
この言葉はもともと「仏道の修行僧が集まって修行をする清浄・閑静な場所」という意味である。仏教が興った頃、修行僧たちは野外で修行をするのが基本で、その場所は野原や林の中だった。そして、後に寺院の建物の中で修行をするようになり、この言葉は僧たちが集まって修行をする建物、つまり「伽藍」(お堂)を指す言葉になった。
その昔、日本でもお坊さんは梅雨の時期など雨露をしのぐ時以外は外で修行をしていた。そのため、伽藍にはほとんど人がいなかった。人の気配がない伽藍は広々として寂しい場所であり、お堂を意味する伽藍に由来して「がらんとしている」という表現が使われるようになったとされる。
また、建物の中に人や物がない閑散とした状況を「がらんどう」とも表現する。これは漢字では「伽藍堂」と書き、「がらん」(伽藍)と同じように寺院のお堂に由来する言葉である。伽藍堂のように大きな部屋に何もない様子から、人や物がない状況を「がらんどう」と言うようになった。
2019/9/28
カテゴリー「語源・由来」