「油を売る」とは、無駄話などをして仕事を怠けること、時間を浪費することを意味する。これは江戸時代に生まれた言葉とされる。
「油を売る」に使われる「油」とは、主に女性が髪につけていた「髪油」(かみあぶら)のことだった。
昔から日本で髪につける油と言えば、今は大相撲の力士などが髪につける「鬢付け油」(びんつけあぶら)が知られているが、これはポマードのように固形に近い固く練った油であり、鬢付け油は「固油」(かたあぶら)とも呼ばれる。しかし、江戸時代初期の油は艶出しや髪の保護のため、椿油や胡麻油、菜種油など液状の「水油」(みずあぶら)と呼ばれるものが使われていた。
江戸の町では行商人がこの水油を売っていた。行商人はその油を桶(おけ)に入れて持ち運び、柄杓(ひしゃく)で量って客の器に移したとされるが、水油は比較的粘性が高く、雫がなかなか途切れず時間がかかった。そこで油売りは色々と話をして間を持たせていた。「油を売る」はこの油を量り、客の器に移す時の雑談に由来する言葉である。
油売りは決して怠けていたわけではないが、女性相手に長々と世間話をする様子から、無駄話で時を過ごすことを「油を売る」と言うようになった。さらに、雑談で怠けているように見える様子から、無駄話で仕事を怠けることの意味でも使われるようになった。
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2019/9/21
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