マツタケ(松茸)は、独特の強い香りを持ち、国産のマツタケは食用キノコの最高級品に位置付けられている。
今では「高級なキノコ」というイメージのあるマツタケだが、昔はとても安く一般の人が普通に食べていた。国産マツタケの平均市場価格は、1995年(平成7年)に1kgあたり約3万3000円の高値を記録し、近年では1kgあたり2~3万円である。一方、1965年(昭和40年)では1kgあたり約1590円で、市場価格では1本あたり80円となり、干しシイタケよりも安いキノコだった。
マツタケの生産量は、1965年(昭和40年)に1291トンだったものが、2016年(平成28年)には69トンであり、当時のわずか5%の生産量になってしまった。なぜ生産量がこれほど減少してしまったのか。
マツタケはアカマツ(赤松)の木の周りに生える特徴がある。また、アカマツの木の近くに「シロ」と呼ばれる白い菌糸の塊(コロニー)を形成することでマツタケが出来る。シロはマツタケの本体である菌糸とアカマツの根が一緒になったもので、アカマツの根から栄養を吸収して成長する。
アカマツの樹齢が約30~50年になるとマツタケの発生が活発になる。そのため、マツタケの発生にはある程度の樹齢のしっかりしたアカマツの木とシロという菌糸が必要になる。発生の時期は9月中旬から10月下旬で、このシロからマツタケが生える。
また、マツタケは土の上に落ち葉や枝がたくさんあって、栄養が多すぎるとなかなか生えない。マツタケは栄養が少ない土を好む。栄養が多い土では、他のキノコやカビがたくさん発生してしまい、生存競争に負けてしまうためである。
戦後間もない頃まで、人々は山で落ち葉や枝を拾い、それを燃料にして煮炊きをしていた。そのため、山の落ち葉や枝は自然と減っていた。ところが、1953年(昭和28年)頃から状況が変わり、プロパンガスが普及し始めた。プロパンガスを使うことで簡単に火を起こすことが可能になり、人々は落ち葉や枝を拾わなくなった。
プロパンガスが普及したことで、落ち葉や枝が多く、土の栄養が豊かな山が多くなった。これによりマツタケは他のキノコやカビに生存競争で負けてどんどん減少し、その価格が高騰していった。
現在、マツタケの値段が高い理由として、プロパンガスが普及したことがその理由の一つと考えられている。また、独特な香りを持つマツタケは、毒キノコと間違って食べてしまう心配がない。マツタケは誰もが安心して食べられるキノコとして珍重されてきたことも値段が高い理由の一つである。
2019/12/28
カテゴリー「食べ物」