「能面」は顔より少し小さく、演者のあごが能面から出ている。これは全ての能面に共通する特徴であり、わざと小さく作られている。
能において欠かせない存在である能面は約250種類あるとされ、それぞれに詳細な設定がある。例えば、「般若(はんにゃ)」は女性が怒った時の顔を表現したものである。嫉妬の度が極めて強く、鬼のような形相になった女性を表現しているが、よく見ると女性的な眉が描いてあるのも特徴である。
また、能楽師でも憧れる面が「翁(おきな)」である。これは神を擬人化した老人の面で、最も古くから存在する能面とされている。翁の面は他の能面と異なり、眼が全てくり抜いてある、綿や毛を植えたぼうぼう眉、面の口から下の部分を切り離して紐で結んであるという特徴がある。
このように奥深い能面だが、能面が顔より小さいのは、演者の顔と面の一体感を出すためである。さらに、演者のあごや輪郭を出すことで表現の幅を広げるためという理由がある。
能では擬音が使えないなど言葉の制限があるため、少しでも感情を伝えやすくするための工夫として能面を小さくしている。これにより顔全体を覆う面より躍動感を得ることが出来る。能面の大きさの違いはわずかな差だが、能において能面の大きさはとても重要な要素である。
2020/2/27
カテゴリー「歴史・文化」