「熱海(あたみ)」は静岡県の最東部に位置し、年間700万人もの人々が訪れる人気の温泉地である。熱海温泉は日本の三大温泉の一つとも言われる。
「熱海」という地名は、温泉地の近くに海があるから熱海ではなく、本当に「熱い海」があったことに由来する説がある。古代、熱海の海は煮えたぎる海で、海水は沸騰し、煙が立ち込めていた。その熱湯により魚は死に、人々は困り果てていた。
上の画像は江戸時代に描かれた古代の熱海の様子で、煙が上がる海などが見られる。その当時の熱海は火山活動が活発だった場所で、現在も熱海にはその火山の堆積物が残っている。火山活動が落ち着いた後も地中に残った熱源により、高温の熱泉が海中から噴き出していた。
つまり、大昔は熱海は温泉地ではなく、「熱い海」がある場所であり、そこから「熱海」の名前が付けられた。また、「あたみ」の名前は、「熱い海がある場所」という意味の「あつうみが崎」が変化して「あたみ」になったという説がある。
その後、平安時代に作られた辞書『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』では、「あたみ」には「直見」の漢字が当てられている。元々の熱い海を意味する「熱海」は人々の恐怖心をかきたてたためか、長らく封印されていた。そんな中、平安時代の終わり頃に、海中に湧いていた温泉の湯元が陸地に移動した。これにより熱くて恐ろしい海は静かになり、温泉地の熱海が誕生した。
そして、鎌倉幕府が開かれ、政権が京都から鎌倉へ移された。これにより武士や僧侶たちが熱海の温泉に押し寄せ、関東の温泉人気の火付け役の一つとなった。この時代には「あたみ」に「安らぎが多く美しい」と書く「安多美」の漢字が当てられていた。
その後、元々の「熱海」の漢字が使われるようになり、現在では優雅な癒しの温泉地として観光客など多くの人々に親しまれている。
2020/3/23
カテゴリー「地理・地名」