「出版不況」とも言われるように出版業界は市場規模が縮小傾向にある。そんな中でも「グッズつき本」は人気を集めている。
グッズが付録としてついてくる本は「付録つき本」や「マルチメディア本」などとも呼ばれる。「マルチメディア本」とは、もともと本にCDやDVDなどのメディアがついた本のジャンルで、それが派生して様々なグッズがつくようになった。
付録には美容アイテムやバッグ、マクラ、ルーペメガネ、スリッパ、調理器具、楽器など様々なものがある。宝島社の「スッキリ美顔ローラー」のように人気のある「グッズつき本」は、シリーズ累計で260万部を売り上げ、その売上金額は約75億円にも上る。
そんな「グッズつき本」が爆発的な人気となった最大の理由は、書店に置いてあることである。書店の本棚をグッズの棚に置き換えるという発想の転換があった。近年、書店の数は減少していると言われるが、それでも全国に約1万2000店もの書店がある。様々な商品を取り扱う大型家電量販店の約3000店と比べて圧倒的に多い。
店舗の数が多ければ、それだけお客さんの目に触れる機会も多くなり、これが「グッズつき本」の人気につながっている。さらに、書店に「グッズつき本」を置くメリットとして、グッズに関心を持つお客さんと巡り合う可能性が高いことが挙げられる。
お客さんは書店で最初に足を運ぶのは、自分が興味のあるジャンルの棚である。例えば、美容に興味のある人がそのジャンルの棚に行き、そこに美顔ローラーのようなグッズがあれば、競合商品が少ない中でよく目立ち、手に取る機会が増える。
また、数多くある書店に置くため、数万・数十万単位でグッズを発注することになる。これにより大幅なコストダウンができ、より良い品質のグッズを低価格で提供することができる。
このように「グッズつき本」は書店に置くメリットとして、①店舗数が多い、②競合商品が少ない、③低価格に設定できる、という3点が挙げられる。このようなメリットを最大限に生かしてヒット商品を生み出している。
一方で、「グッズつき本」を書店に置く時に、普通の本とは違う苦労もあるという。それは「グッズつき本」のサイズを雑誌と同じ「A4ワイド」などの判型に収めることである。「A4ワイド」サイズに収めることで書店では陳列しやすくなる。他にも判型を統一することで、紙の購入や輸送、在庫管理などを合理化できるというメリットもある。
2020/4/3
カテゴリー「生活・科学」