「十八番」は「じゅうはちばん」または「おはこ」と読み、「その人が最も得意とする芸や技」などの意味がある。
これは江戸時代の歌舞伎から生まれた言葉で、「歌舞伎十八番」の略とされる。歌舞伎通ならよく知っている十八の演目があった。これは1832年(天保3年)に歌舞伎役者の七代目・市川團十郎(いちかわ だんじゅうろう)が制定したとされ、歴代の團十郎が演じた得意の演目に新作を加えた十八本を選定した。これが「歌舞伎十八番」であり、これら十八の演目を人々に宣伝した。
また、十八という数字は江戸時代以前に仏教に縁のある数字で、例えば、毎月18日は観世音菩薩(かんのん ぼさつ)の縁日である。その他、阿弥陀如来(あみだにょらい)は四十八の願(がん)を立てたとされるが、その48の中でも18番目の願が最も大事な願とされ、「弥陀の十八願」と言われている。そんな十八という数字を團十郎は歌舞伎に取り入れた。
市川團十郎の集大成である「歌舞伎十八番」は、当時としては画期的な宣伝方法であり、「家の芸」を内外に見える形にした。そして、その斬新な試みは團十郎の名声を高めることとなった。
なお、「十八番」は「おはこ」とも読む。江戸時代には高価な書画や茶器などを丁重に箱に入れて、箱の中の品が「真作である」ことを示す鑑定者の署名の「箱書き」を添えた。そこから、「認定された本物の芸である」という意味で、「おはこ」と言うようになった説がある。他にも、「歌舞伎十八番」の台本を箱に入れて大切に保管していたことに由来する説がある。
2020/4/25
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