「エール」は、日本では「学生スポーツの試合などで、応援の際に発する声」「声援」などの意味で使われる言葉である。
「エール」の由来は英語の「yell」であるが、実は「yell」は主に「叫び声を上げる」「大声で叫ぶ」「怒鳴る」という意味である。日本で使われる「エール」には「応援」や「声援」という意味合いがあり、「エールを送る」のような使われ方がされる。しかし、本来の英語にはこのようなポジティブな意味はほとんどない。
例えば、英語では「yell at him」(彼を怒鳴りつける)や「give a yell」(叫び声を上げる)のような使われ方がされ、これらはあまりよい意味ではない。日本の「応援」を意味する「エール」は「カレッジエール」(college yell)に由来する説がある。
1905年(明治38年)春に早稲田大学野球部が日本人としては初の海外遠征を行い、アメリカを訪れた際に、現地の大学スポーツだけで行われていたカレッジエールという応援風景を目撃した。この時、選手らを引率した人物は早稲田大学野球部の創設者であり、「日本野球の父」とも呼ばれる安部磯雄(あべ いそお、1865~1949年)である。そして、皆がまとまって同じことを言い、応援するカレッジエールを日本でも取り入れたのである。
英語では「エール」のみだとあまりよい意味では使われないが、「カレッジエール」となると今の日本の「エール」に近い意味になる。日本の野球場で整然と行われたカレッジエールは、次第に広まっていき、日本独自の応援文化として進化を遂げた。このような歴史がある「応援」は、日本においていつしか「エール」と呼ばれるようになった。
2020/5/4
カテゴリー「語源・由来」