「取舵」「面舵」の意味・由来

「取舵(とりかじ)」とは、船舶の航行において、進行方向の「左」に舵をとることを意味する。これにより船は左の方向へ進む。

一方、「面舵(おもかじ)」とは、進行方向の「右」に舵をとることを意味する。これにより船は右の方向へ進む。これらの「取」と「面」の漢字は後で当てられた字である。

船

「取舵」の「とり」は、十二支の「酉(とり)」の方角に由来する言葉である。十二支は年だけでなく時刻や方位にも使われており、方角を十二支に分けた場合、北が「子(ね)」で南が「午(うま)」となる。北極と南極を結ぶ線を「子午線(しごせん)」と言うのも、この十二支の方位に由来する。

そして、西(左)が「酉(とり)」で東(右)が「卯(う)」となる。左の酉(とり)の方位に舵を切るので、「酉舵(とりかじ)」と呼ばれた。一方、右は卯(う)の方位となり、「卯の舵(うのかじ)」となる。これを古くは「卯面舵(うむかじ)」と言い、音がなまって「面舵(おもかじ)」になったとされる。

ちなみに、北と南を結ぶ「子午線」と同様に、東と西を結ぶ線は十二支の方位に由来して「卯酉線(ぼうゆうせん)」と呼ばれる。

また、「取舵」は英語では「port(ポート)」であり、これは「船の左舷」や「港」という意味もある。一方、「面舵」は「starboard(スターボード)」であり、「船の右舷」という意味もある。昔の船は、舵が右舷側(starboard)に設けられており、これを傷付けないように、舵のない左舷を港側(port)にして接岸することが多かった。

「starboard」は舵をとるための板「steer board(ステアボード)」に由来する言葉で、「steer」は「舵をとる・操縦する」などの意味がある。「steer board」は右舷側に設けられ、次第になまって「starboard」になり、「右舷」や「面舵」を意味する言葉になったとされる。

「左舷=港側」という伝統的な考え方は、船舶からそのまま現代の航空機にも引き継がれており、旅客機などの出入口は機体の左側に設けられている。

リンクWikipedia日本船主協会

2020/5/16

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カテゴリー「語源・由来

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