「スペインかぜ」の名前の由来

1918年(大正7年)から約3年に渡り猛威を振るった「スペインかぜ」(Spanish Flu)は、世界で5000万人もの死者を出したとも言われる。

H1N1型インフルエンザウイルス
H1N1型インフルエンザウイルス

「スペインかぜ」は、人類史上最も死者を出したパンデミックの一つであり、日本でも感染が拡大し、約45万人を超える死者が出たと言われる。「スペインかぜ」という名前は分かりやすいが、誤解を生む名前でもある。

「スペイン」という名前が付いているが、その発生地はスペインではなかった。初の感染者はアメリカ人であり、「スペインかぜ」はアメリカで発生したという説が有力とされている。

第一次世界大戦の中で、アメリカでは軍隊の中でインフルエンザが流行していた。そのアメリカがヨーロッパ戦線に参戦し、派遣された軍隊と共にインフルエンザが海を渡り、世界に広がっていった。

しかし、その感染情報は軍事機密扱いで、各国で情報が隠蔽された。その中で唯一の中立国であったスペインだけが感染症についての情報を発信した。そのため、「スペインで発生したかぜ」だと誤解された。

また、「スペインかぜ」は「かぜ」という名前になっているが、正確には「インフルエンザ」である。もともと日本では「かぜ」のことを「感冒(かんぼう)」と呼んでいた。そして、「インフルエンザ」は「流行性感冒」と呼ばれた。

「スペイン」は漢字で「西班牙」と書く。「スペインのインフルエンザ」であれば、正しくは漢字で「西班牙流行性感冒」と書くべきところを、新聞などで「西班牙感冒」と省略した。さらに「スペインかぜ」と読み仮名が振られ、その略称が一般に広まってしまった。

世間では「スペインかぜ」と呼ばれたことで「かぜの一種」という認識が強かった。そして、「かぜ」として軽く見られたこともあり、「スペインかぜ」というインフルエンザへの対策の初動は遅れ、その間にインフルエンザは各地で猛威を振るう結果となった。

リンクWikipediaコトバンク

2020/11/28

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カテゴリー「語源・由来

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