「にらめっこ」とは、子どもの遊びの一つで、向き合った二人が相手を笑わせようと様々な顔つきをする遊びである。
現在では、わらべ歌に合わせて表情をつくることが多く、「だるまさん、だるまさん、にらめっこしましょ わらうとまけよ、あっぷっぷ」などの歌がある。そんな「にらめっこ」はもともと「戦に勝つための訓練」だったという説がある。
「にらめっこ」は平安時代の終わり頃に始まったとされるが、その当時は「目くらべ」と呼ばれた。平安時代末期の武将・平清盛(たいら の きよもり、1118~1181年)が「目くらべ」を行ったという話が『平家物語』に由来する書物に記録されている。
これは平清盛が骸骨(がいこつ)と「目くらべ」を行い、にらみつけて目力で骸骨を退治したという話である。「目くらべ」とは、武士同士の真剣勝負で、「にらみつける」ところから「にらみっこ」となり、これが「にらめっこ」となった。
日本人は相手の顔の正面を見たり、目を見て話したりするのが苦手だとされるが、当時は武士が戦に負けないために、敵を正面から見る訓練として「にらめっこ」が行われた。その後、鎌倉時代になると、にらみ合うという要素を残しつつ、相手を笑わせるという「遊び」に変化していった。
さらに、江戸時代になると「にらめっこ」のわらべ歌が誕生し、子どもの遊びとして定着していった。わらべ歌では「にらめっこ」の相手として「だるまさん」が出てくるが、これは「達磨大師(だるまだいし)」という仏教の僧侶のことである。
達磨大師は、修行のために壁に向かって9年間ひと言もしゃべらず座禅を続けたとされる人物である。「にらめっこ」のわらべ歌には、そんな笑わない達磨大師(だるまさん)を笑わせようとする意味が含まれている。
2021/10/11
カテゴリー「歴史・文化」