「入梅(にゅうばい)」は、梅雨入りの時期に設定された「雑節」(特別な暦日)である。現在広まっている定気法では太陽黄経が80度のときで6月11日頃。
「入梅」は「にゅうばい」のほかに「ついり」「つゆいり」とも読む。本来は暦の上での「梅雨入り」を意味する漢語表現である。対義語は「梅雨明け」を意味する「出梅(しゅつばい、つゆあけ)」だが、日本ではほとんど使われない。
梅の実が熟して黄色く色づく頃に、雨季に入ることから「入梅」とされる。梅雨に入る一つの目安とされるが、地域や年によってその時期は違うため、実際の梅雨入りとは日付が異なる。梅雨入りしてから約30日間が「梅雨」の期間となる。
農家にとって梅雨入りの時期を知ることは、田植えの日を決める上でも重要であった。昔は、現在のように気象予報が発達していなかったため、江戸時代に目安として暦の上で「入梅」を設けたとされる。
梅雨の時期の花として紫陽花(アジサイ)が挙げられる。雨に濡れて咲く姿が印象的である。境内にアジサイの花を多く植えている寺院は日本各地にあり、「あじさい寺」の愛称で呼ばれることもある。また、この時期には各地の寺や公園などで「あじさい祭り」のイベントが行われる。
アジサイの咲く梅雨の頃は気温の変化が激しい時期であるため、医療の発達していない時代には多くの病人や病死者が出た。アジサイは死人に手向ける花とも呼ばれ、過去に流行病などがあった地区の寺に多く植えられた。現在では、梅雨の時の古寺に彩りを添えるため、観光の目玉になることも多くなった。
時候(じこう)の挨拶で用いる「入梅の候(こう)」は「梅雨の季節に入る時節」を表すが、宛先の地で梅雨入りが発表されていることが前提となる。
「入梅」の日付は以下の通り。
関連する記念日として、全国的に梅の摘み取りが始まり、梅酒づくりのシーズンであることから「入梅」のこの日は「梅酒の日」でもあり、「入梅」になることが多いという理由から6月11日は「傘の日」となっている。