東日本大震災発生から2018年の今年で7年が経った。原発事故で放射性物質に汚染された土壌を取り除く除染作業は帰還困難区域以外は2018年3月で終了した。
これまでの作業で詰めた除染袋の数は1,650万個にも及ぶ。その体積は2,200万m3で東京ドーム18個分にもなる。そんな中、帰還困難区域で今後も必要な除染作業において、ある意外な物が注目されている。それが葛飾北斎の浮世絵である。
葛飾北斎の浮世絵が除染作業で注目されている理由には、ドイツで発見され、北斎が好んで使ったプルシアンブルーと深い関係がある。
富獄三十六景
画像元:ART LOVER
北斎の浮世絵は青が魅力である。北斎より前の浮世絵は時間が経つにつれて青がくすんでしまっていた。北斎の浮世絵は今でも鮮やかな青・プルシアンブルーが残っている。これまでに雨に濡れたりしてきたはずなのだが、青が和紙に刷り込まれて結合していたから今でも残っている。
東京大学の開発チームは今なお鮮やかに残る北斎のプルシアンブルーに着目した。と言うのも、プルシアンブルーはジャングルジムのような構造をしており、放射性物質のセシウムイオンを捕まえる性質がある。東大チームはプルシアンブルーを使ってセシウムイオンを吸着する作戦を考えた。
プルシアンブルーの結晶構造
画像元:AIST-npfd
プルシアンブルーは水に溶けやすいため、海や川の除染作業には使う事ができなかった。そこで北斎の画をヒントに、プルシアンブルーと和紙の成分であるナノセルロースを結合させた。これにより水に溶ける弱点を克服し、水に一切溶けなくなった。この素材を使いセシウムイオンだけを選択し吸着する除染スポンジの開発に成功した。そして現在、これを海へ沈めて、海の汚染を除去する計画が進行中である。
2018/8/5
カテゴリー「歴史・文化」