ナチスを騙してヒーローになった贋作家メーヘレン

贋作(がんさく)とは、オリジナルとは別の作者によって模写・模作され、作者の名を騙って流通する絵画・彫刻・書などの芸術品や工芸品、またはその作成行為の事である。

有名作家の作品を真似し、巧妙に作られた贋作は、一流の専門家でも鑑定が難しい。そのため、本物として取引される事態も珍しくなく、美術界において最も悩ましい問題の一つである。

ナチス・ドイツの総統アドルフ・ヒトラー(1889~1945年)は若き日に画家を志すも、美術大学の受験に失敗。政治家になってからも絵を描き続けるなど、美術に情熱を燃やしていた。その影響もあり、ナチスは世界中の美術品を略奪している。そんなナチスを騙した贋作家は、オランダ人画家のハン・ファン・メーヘレン(1889~1947年)である。

ハン・ファン・メーヘレン(1945年)
ハン・ファン・メーヘレン

若き日のメーヘレンは画家を目指し、数々の展覧会に出品するごく普通の青年だった。しかし、専門家からは「絵が古臭い」と評価を得られず、挫折をしてしまう。自分の作品を認めず、批判ばかりする美術界に復讐をするため、贋作作りに手を染めるようになる。

主に描いたのが同じオランダ出身で、『真珠の耳飾りの少女』『牛乳を注ぐ女』などで有名なヨハネス・フェルメール(1632~1675年)の作品だった。1940年代当時、フェルメールの作品は「オランダの国宝」と呼ばれていたが、残された作品はわずか30数点と非常に少なかったため、フェルメールの研究が進んでおらず、贋作が作りやすい状況だった。

そんな中、メーヘレンは完璧な贋作を作り上げ、次々と売りさばいていった。手に入れた金額はなんと70億円。そんな客の中にナチス・ドイツの幹部もいて、贋作を購入していた。しかし、完璧すぎる技術が仇となり、メーヘレンは地獄を見る事になる。

1945年(昭和20年)、ドイツが降伏し、占領下にあったオランダは解放される事になった。しかし、その直後にメーヘレンは逮捕されてしまう。その罪名は「国家反逆罪」。ナチス・ドイツにオランダの国宝とも呼ばれるフェルメール作品を渡した事を罪に問われた。贋作家メーヘレンがナチスに売った絵画は誰もが本物だと信じて疑わなかった。

メーヘレンは拘留中にナチスに売却した絵画は自分が描いた「贋作」だと告白した。その証拠として法廷で実際に絵を描いて見せた。さらにX線写真などの鑑定が行われた結果、ナチスに売った絵は贋作であると証明された。

するとメーヘレンの評判は「オランダの国宝を売った裏切り者」から一転し、「ナチス・ドイツを騙し、フェルメールを守った」と評され、一躍英雄になった。画家としては有名になれなかったメーヘレンだが、その名は「20世紀最大の贋作事件の主人公」という形で残る事となった。

リンク:Wikipedia

2018/12/8

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カテゴリー「歴史・文化

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