イギリスの物理学者アイザック・ニュートンはリンゴの実が木から落ちるのを見て「万有引力の法則」を発見したという逸話は有名である。その貴重な木が今では東京・文京区などにある。
その場所は文京区にある「小石川植物園」である。正式名称は「東京大学大学院理学系研究科附属植物園」で、東京大学の附属施設の一つであり、植物に関する様々な研究を行っている。また、江戸時代には無料の医療施設「小石川養生所」があった場所で、色んな薬草が育てられていた。
「ニュートンのリンゴの木」は、ニュートンが万有引力を発見した1665年から300年を記念して、1964年(昭和39年)にイギリスからその苗木を譲り受けた。それは英国物理学研究所所長サザーランド卿から、日本学士院長・柴田雄次博士に贈られたものだった。しかし、羽田国際空港に到着したその苗木はリンゴ特有の「高接病ウイルス」に感染していることが分かった。これは接ぎ木で伝染するウイルス病である。
病気や害虫の付いた植物は国内の植物保護のため基本的に輸入が禁止されており、このような場合には焼却処分することになっている。しかし、ニュートンにちなむ貴重な文化遺産であったことから、特別に焼却処分を行なわず、小石川植物園で預かって隔離栽培することとなった。
その後、リンゴの細胞は分裂するがウイルスの増殖が抑制される高温条件で親株を栽培し、新しく伸びた枝の先だけを他の台木に接ぎ木するという方法が試みられた。そして、ウイルスが汚染していないウイルスフリーのリンゴの木を5本作ることに成功した。検査の結果、ウイルスが発見されなかったため、ようやく日本国内への輸入が許可された。
こうして準備が整ったニュートンのリンゴの木が小石川植物園の庭に植え出され公開されたのは、日本に渡来してから15年余の年月が過ぎた1981年(昭和56年)のことだった。今ではニュートンのリンゴの木は、小石川植物園の記念樹となっている。また、科学の振興啓発のために、各地の学校や科学に関わる施設に接ぎ木に使う穂木で分譲され、日本の各地で育っている。
2019/1/25
カテゴリー「生き物」