スーパーや青果店には大きなトマトと共に、小さなトマトが売られている。この小さなトマトは「ミニトマト」または「プチトマト」と呼ばれる。
「ミニトマト」と「プチトマト」は同じものだと思われがちであるが、正確には違いがある。「ミニトマト」は重さ10~30g程度の小さなトマトの総称である。一方、「プチトマト」はミニトマトの中の品種の一つである。
なお、「ミニ(mini)」は英語、「プチ(petit)」はフランス語で「小さい」「小型の」という意味である。ミニトマトが日本で普及した過程を確認してみる。
小さなトマトは昭和初期に日本にすでにあった。その当時は「小型トマト」や単に「小さなトマト」などと呼ばれていたが、普通の大きなトマトが一般的だった当時、小さなトマトは市場にほとんど出回っていなかった。
その後、1975年(昭和50年)頃にプチトマトが発売され、爆発的なヒットとなった。種メーカー「タキイ種苗」が小さなトマトの種に「プチトマト」という名前を付けて発売したのである。プチトマトという名前は、もともと種の商品名だった。なぜプチトマトはヒットしたのか。
1954年(昭和29年)から1973年(昭和48年)頃までの高度経済成長期により、都心部に人が集中し、マンションや団地で暮らす人が急増した。これにより、自宅のベランダで植物を育てる人が多く現れ、プランターでも栽培できるトマトとしてプチトマトが販売された。ベランダで手軽にトマトが作れるということで、プチトマトは大ヒットした。そして、人々は小さなトマトのことを「プチトマト」と呼ぶようになった。
家庭菜園用のプチトマトの大ヒットにより、全国の農家で様々な品種の小さなトマトが栽培された。これにより、小さなトマトも市場に出回るようになった。そして、1985年(昭和60年)頃から小さなトマトの総称として「ミニトマト」と呼ばれるようになった。
その後、糖度が高くて美味しいミニトマトが次々に登場したことで、プチトマトという品種は2007年(平成19年)に販売を終了した。プチトマトは小さなトマト人気の火付け役であり、現在でも小さなトマトのことを「プチトマト」と呼ぶ人は多い。
また、現在では「ミニトマト」の品種として、アイコやイエローアイコ、アメーラルビンズ、キャンディドロップ、ジュリエッタ、ブラッディタイガー、エバーグリーン、チェリースノーボールなど、色や味が違う小さなトマトが30種類以上も販売されている。
2019/10/15
カテゴリー「食べ物」