結婚している男性が配偶者・パートナーの女性を他人に紹介する時などに、「妻」「嫁」「女房」「奥さん」「家内」「かみさん」などの呼び方を用いる。
それぞれの呼び方の言葉の由来を確認してみる。また、以下の言葉の由来から、夫婦が対等な立場である現代社会において、配偶者の男性を「夫(おっと)」と呼ぶのに対して、配偶者の女性を呼ぶのに最も適した言葉は「妻(つま)」とされている。
「妻」はこれらの中で最も古くから存在する言葉である。奈良時代に成立した日本最古の歴史書『古事記』にも記されている。しかし、奈良時代には現在のような婚姻制度はまだなかった。
当時は親に認められて共に生活をする女性を「妻」と呼んだ。その後、明治時代になると現在のような婚姻制度が確立され、結婚相手を正式に「妻」と呼ぶようになった。
「嫁(よめ)」という言葉は、鎌倉時代の1275年頃の『名語記(みょうごき)』という辞書に載っている。そこには「息子の妻をよめと名付ける」という意味の内容が記されている。
息子と一緒に住むようになった女性のことを、男性の両親が近所の人に「良い女」と言ったことに由来する。当時は「女」を「め」と読み、「よいめ」が省略化されて「よめ」となった。
つまり、本来「嫁」とは「息子の妻」のことを意味する言葉である。ちなみに、「嫁」の対義語は「娘の夫」のことを意味する「婿(むこ)」である。
「女房」はもともと「使用人の女性」という意味の言葉である。平安時代、身分の高い貴族は妻以外に、食事など身の回りの世話をする使用人を屋敷に住まわせていた。
その使用人の女性が住んでいる部屋を「女房」と呼んだ。そして、いつしか使用人の女性のことも「女房」と呼ぶようになった。
室町時代の1562年頃の『北条幻庵覚書』という文書に、「奥さん」の由来となる「おくがた」という言葉が記されている。「おくがた」は「奥の方の部屋」を表す言葉として使われていた。
当時、身分の高い屋敷の主は配偶者の女性を屋敷の奥の方の部屋「おくがた」に住まわせていた。奥に住む主人の配偶者のことを皆は敬意を込めて「奥方」と呼ぶようになった。その後、「奥方」という言葉が次第に変化し、「奥様」さらに「奥さん」と呼ぶようになった。
明治時代、日本に会社制度が誕生し、男性は家の外に出て会社で働き、女性は専業主婦として家の中を守るという家庭が増えた。家の外で働くようなった男性が自分の配偶者を「家の中にいる人」という意味で、「家内(かない)」と呼ぶようになった。
「かみさん」という言葉は「目上の人」を表す言葉として使われていた。もともと目上の人を表す「上様(かみさま)」という言葉が変化して出来たものである。
商人や職人などの配偶者の女性のことを「かみさん」、その家の女主人のことを「おかみさん」と呼ぶ場合もある。
2019/12/3
カテゴリー「語源・由来」