奈良公園の鹿の糞を掃除する虫

奈良市にある奈良公園とその周囲には鹿(シカ)が生息している。この奈良の鹿は野生動物であり、国の天然記念物にも指定されている。

奈良公園の鹿

1000年以上前から神様の使いとして保護されてきた奈良の鹿は1300頭いると言われている。これらの鹿はもちろん糞(ふん)をするが、1頭が1日にする糞の量は約1キロであり、1300頭いるので、1日で1トンを超える量の糞が街に溢れることになる。

そんな大量の糞をどうのようにして掃除しているのか。実は奈良公園の鹿の糞は人が掃除しているわけではない。その代わりに「糞虫」(ふんちゅう)と呼ばれる「オオセンチコガネ」という虫が処理してくれている。

オオセンチコガネ

辺り一面に広がった糞を掃除しているオオセンチコガネは、コガネムシの仲間で、金属光沢のある美しい体色が特徴で、大きさは1.6~2.2cm、日本全国に分布し、糞や死骸を食べる自然界の掃除屋さんである。奈良公園のオオセンチコガネは濃い青色の個体が多く、一般に「ルリセンチコガネ」と呼ばれている。

そんなオオセンチコガネを含む糞虫は鹿が糞をするとそのニオイに誘われて糞に近付き、素早く糞の下に潜り込む。そして、その中に巣を作り、3~7日間かけてゆっくり糞を食べる。細かく砕かれた食べかすの糞は土にかえり、公園の芝の肥料になる。さらに、その糞の肥料で成長した芝を鹿が食べるという循環が出来ている。

1つの糞に何匹もの糞虫が集まることもあり、奈良公園やその周辺には数え切れないくらい多くの糞虫がいることになる。また、奈良市には、糞虫を展示・研究する「ならまち糞虫館」が開設されている。

以下、奈良の鹿の糞に関連する話で、1965年(昭和40年)に発表された吉永小百合の楽曲『奈良の春日野』(ならのかすがの)の歌詞では「奈良の鹿の糞」は「黒豆」と形容されている。その歌の1番の歌詞は以下の通り。

奈良の春日野 青芝に
腰をおろせば 鹿のフン
フンフンフーン 黒豆や
フンフンフーン 黒豆や
フンフンフンフン 黒豆や

歌詞の内容は、1番から順に「奈良の春日野の芝生に座ったら鹿の糞が落ちていた」「鹿に梅干しをやったら匂いを嗅いだだけで去っていった」「東大寺の僧侶達も春の陽気に眠気を誘われているようだ」というものである。

その後、1987年(昭和62年)にフジテレビの昼の人気番組『笑っていいとも!』において、奈良市出身のお笑いタレント明石家さんまがギャグとして取り上げたことで、この楽曲は大きな注目を集めることとなった。

リンクWikipediaならまち糞虫館

2019/12/27

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カテゴリー「生き物

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