写真を撮る時に「はい チーズ!」という言葉を使う。なぜ「チーズ」なのか。言われてみると不思議な言葉である。
もともと写真を撮る時に「はい チーズ!」と言うようになったのは、日本ではなく海外にルーツがある。海外では写真を撮る側の人が「say cheese!」(チーズと言ってごらん)と言い、撮られる側の人が「cheese!」(チーズ!)と言い、この時にシャッターを切る。
その歴史をたどると、19世紀末にさかのぼる。その当時、カメラはまだ一般家庭には普及しておらず、写真を撮ることができるのは写真館しかなかった。その写真館に写真をお願いすると1枚が数万円と、非常に高価だった。そのため、失敗できない、動いてはいけないと緊張して顔の表情が硬くなる人が多かった。
そこでカメラマンが「say cheese!」と言って、笑っているように見える写真を撮ったのが始まりとされる。「cheese!」を言うと口元が「イー」の形になり、口角が上がって笑顔のように見える。もともとは笑顔にさせることが目的だった。
口元が「イー」の形になる言葉は「happy」や「lucky」「funny」など他にあるが、「cheese」が選ばれた理由として、チーズは美味しい食べ物であり、その言葉の親しみやすさ、覚えやすさ、発音のしやすさなどが理由として挙げられる。また、緊張している状況において、美味しいチーズを想像することでリラックスする効果も期待できる。
世界的に見ると「チーズ(cheese)」以外の掛け声もあり、例えば、中国では「ナス(茄子)」(中国語の発音がチーズに近い)、韓国では「キムチ(김치)」、スウェーデンでは「オムレツ(omelett)」、スペインでは「ポテト(patata)」、メキシコでは「ウィスキー(whisky)」などとなっている。
日本でチーズが広まった理由としては、1963年(昭和38年)に放送された雪印乳業のチーズのテレビCMが挙げられる。そのCMの中で写真を撮る時の「say cheese!」→「cheese!」のやり取りが紹介されており、これが日本における掛け声「はい チーズ!」のきっかけになったとされる。
日本で「はい チーズ!」と言う理由としては、「チーズ!」が海外において写真を撮る時の掛け声「cheese!」に由来する言葉であり、自然に笑顔になれる言葉だったためである。
ただし、日本語の「チーズ」は口が「ウ」の形で終わってしまうことから、掛け声としては向いていないとの指摘もある。「はい チーズ!」と同じように日本において定番となっている「1+1は?」→「2!」という掛け声は口が「イ」の形で終わり、口角が上がるため、写真の撮影に適していると言える。
2019/12/31
カテゴリー「生活・科学」