病気は「かかる」風邪は「ひく」理由

「病気にかかる」「インフルエンザにかかる」「花粉症にかかる」などと表現するが、何故か風邪の時は「風邪をひく」と表現する。

また、「風邪にかかる」という表現は使われるが、「病気をひく」「インフルエンザをひく」「花粉症をひく」という表現は使われない。

風邪をひいた人

「かかる」は漢字では「罹る」と書く。そして、国語辞典には「好ましくないこと、病気、災害、刑罰、迷惑などが身に及ぶ。ふりかかる」と説明されている。また、「罹」という漢字は「網」と「鳥」と「心」を組み合わせた字とする説がある。つまり、「網にかかった鳥の心」となり、「災厄が身に及ぶこと」を表した漢字である。

一方、「ひく」は漢字では「引く」と書く。国語辞典には「自分の体に受け入れる。身に及ぼす」と説明されている。つまり、「体内に引き込む」という意味である。

「風邪」の時だけ「引く」の動詞を使うのは、昔、風邪は病気とは考えられていなかったことがその理由に挙げられる。「風邪」の原因は「悪い風=邪気」と考えられていた。そして、「風」に「邪気」の「邪」の字を当てて「風邪(かぜ)」と読むようになった。

古代中国では「風邪」の原因は「肉体に何らかの影響を与える大気(邪気)」と考えられていた。つまり、原因ははっきりしないが何か悪いものを体の中に引き入れた結果が「風邪」という状態だと考えられていた。

日本では平安時代には「風が体内に入ること」を「風邪をひく」という言葉で表現していた。そして、「風邪をひく」という言葉は貴族から庶民へと広がっていった。

このように、昔の人は「悪い風=邪気」を体の中に引き込んでしまうと、咳が出たり熱が出たりと体調が悪くなると考え、「風を引き込む」という意味で「風邪をひく」という言葉が使われるようになった。「風邪」だけ「ひく」が使われるのは、風邪は他の病気とは原因が異なると考えられていたためである。

リンクTBSテレビNIKKEI STYLEコトバンク

2020/2/23

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カテゴリー「語源・由来

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