「見当外れ(けんとうはずれ)」は「見当違い(けんとうちがい)」ともいい、推測や判断を誤ること、方向を誤ることを意味する。
「見当外れもはなはだしい」「見当外れな返事をする」「見当外れな方角」などの使われ方がされる。
「見当外れ」や「見当違い」は江戸時代の「浮世絵」から生まれた言葉である。浮世絵は今でこそ美術館などで鑑賞するものだが、江戸時代にはもっと身近な存在で、人々は手にとって眺めていたという。
それはほとんどの浮世絵が版画で、たくさん摺る(する)ことができ、値段が安かったためである。絵を描く「絵師(えし)」のほかに、絵を板に彫る「彫師(ほりし)」や絵を紙に摺る「摺師(すりし)」がいて、彼らが協力して一枚の浮世絵を完成させた。
特に江戸時代中期には多色刷りが発達し、使う色ごとに何枚もの版木が必要となった。そこでそれぞれの版木には絵がずれないように「目印」を付けた。その目印を「見当」といい、目印を付けることを「見当を付ける」といった。
見当がずれると色もずれてしまうことから「見当外れ」や「見当違い」という言葉が生まれた。現代の印刷においても、多色印刷の際に刷り位置が正確に決まっていないと色がずれてしまう。この色がずれる現象を「見当ずれ」や「版ずれ」と呼び、江戸時代からある浮世絵の名残を留めている。
2020/3/19
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