「虫歯」の「虫」とは何か

一般的には「虫歯」と呼ばれるが、歯学では正式に「齲歯(うし)」と呼ばれ、歯の硬い組織が、口の中の細菌の作用により破壊される状態を意味する。

また、そのような疾患(病気)を「齲蝕(うしょく)」と言い、歯の周りの組織に炎症が起きる病気「歯周病(ししゅうびょう)」と並び、歯科の二大疾患の一つである。

説明しようとすると難しい言葉が並ぶ虫歯だが、その「虫歯」の「虫」の正体とは「ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)」という細菌である。通称「ミュータンス菌」と呼ばれ、その大きさは約1000分の1mm(約1μm)である。また、ミュータンス菌は複数の菌が連結しているのが特徴である。

ミュータンス菌
ストレプトコッカス・ミュータンス

そして、ミュータンス菌が作る二つの物質が虫歯の原因となる。その一つが「グルカン(glucan)」で、ミュータンス菌は食べカスの中にある糖質を餌にしてグルカンというネバネバした物質を作り出す。このグルカンは粘着性が強く、水に溶けにくいため、歯に付着すると取れにくいという性質がある。

このグルカンを住みかにしてミュータンス菌は増殖する。そして、ミュータンス菌は食べ残しの糖を食べて「酸(acid)」を作る。この作られた酸が歯の表面を溶かして虫歯になる。このようにミュータンス菌が作る「グルカン」と「酸」が原因となり、虫歯が発生する。

なお、人は生まれた時には口の中にミュータンス菌が存在しない。その後、口移しや食器の共有などが原因となり、両親などの唾液から感染する。また、上記のように虫歯の原因となるグルカンはネバネバして水に溶けにくいため、虫歯を予防するためには、うがいだけでは不十分であり、歯磨きをする必要がある。

リンクWikipediaコトバンク

2020/5/23

このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリー「生活・科学

関連記事