「塩を踏む(しおをふむ)」とは、「世間に出て苦労する、他人の間でつらい目にあう」という意味の言葉である。
「塩を踏む」は、塩を作る時の塩田に関係のある言葉である。塩田では一般に砂の上に海水をまく。そして、頻繁にかき混ぜながら、天日と風により水分を蒸発させて塩分濃度を上げる。その塩砂をかき集めて海水で洗い、濃縮された塩水を釜で煮詰めて塩を取り出す。
ただし、効率よく純粋な塩を得るためには、多くの工程を踏む必要があった。さらに、夏場は暑くて塩を作る作業はとても厳しい労働であった。そこから、「塩を踏む」は「世間に出て苦労する、つらい目にあう」という意味で使われるようになった。
国語辞典の『広辞苑』には「しお(潮・汐)」の項目に、「潮を踏む」と掲載されており、その意味は「世間の艱難(かんなん:困難にあって苦しみ悩むこと)をなめる、つらい目にあう」となっている。また、その「潮」の字から塩田に由来する言葉であることが分かる。
ちなみに、塩は人間にとって必要不可欠なものである。古代ローマでは兵士に塩を買うための手当が支給されたという。また、兵士の給料が塩で支払われたという話もある。
ラテン語で「塩」は「sal(サル)」であり、これに由来して「塩」の英語は「salt(ソルト)」である。また、上記の古代ローマの塩の話に由来して、「給料」という意味の英語「salary(サラリー)」の語源にもなっている。
2020/8/18
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