首都高で活躍する「インフラドクター」

「首都高速道路」は東京都区部とその周辺地域にある路線長337.8kmの都市高速道路で、「首都高速」や「首都高」と略される。

首都高速道路

首都高は世界でも類を見ない立体構造の高速道路で、その複雑な構造は外国人を含め多くの建造物ファンに人気があり、写真集が出版されているほどである。そんな首都高が今のように複雑な構造になったのには理由がある。

首都高が誕生したのは1962年(昭和37年)のことで、京橋~芝浦の区間(4.5km)が初めて開通した。これは当時の深刻な渋滞問題を1964年(昭和39年)の東京オリンピックまでに緩和させるためで、着工から約2年という短い期間で路線を開通させた。

急ピッチで計画を進めるため、時間のかかる用地買収は避けて、公共用地である道路や川の上に首都高が建設された。そのため、首都高は急なカーブや立体交差など複雑な構造となった。

そして、首都高が建設されてから50年以上が経過した現在では、ひび割れなどの損傷が年間4万か所も見つかっている。そんな状況を改善するために進化を遂げたのが首都高のメンテナンス技術である。

インフラドクター

その技術の一つがAIを活用した「インフラドクター(InfraDoctor)」という高性能な検査を実施できる車である。このインフラドクターは走るだけで道路の損傷個所が分かるマシンで、360度撮影できる10台のカメラと赤外線のレーザー測定器を搭載している。

インフラドクター

インフラドクターは道路を走るだけで半径100m内の構造物の位置情報を計測し、その計測データから3D映像を作成する。そして、その映像から道路のデコボコやひび割れなどを早期に発見できる。

3D映像

しかも、デジタル空間で視点を360度動かすこともできるため、高い場所や高架の裏など見えにくい場所も確認できる。2017年(平成29年)に導入されたこのインフラドクターにより、昔は人が行っていた計測の時間は大幅に短縮された。

インフラドクターの導入前は1kmあたりの計測時間は約7時間だったが、導入後は1kmあたり約5分で終わり、計測速度は約84倍になった。さらにコストの面でも大幅に改善された。

例えば、道路の損傷を点検・調査する場合、インフラドクターの導入前は夜間に交通規制をする必要があり、そのための人件費が必要だった。導入後はその人件費が不要となった。また、調査から図面にする作業でも人件費を大幅に下げることができた。

さらに、このインフラドクターで収集したデータをもとに補修箇所をAIが自動診断してくれる。ただし、日本の安全基準ではインフラドクターで異常が見つかっても、近くから人が目で見て点検することが義務付けられている。

このように、首都高では損傷の調査や補修などメンテナンスのために、インフラドクターという高性能な車・システムが活躍している。

リンク首都高技術Wikipedia

2021/3/30

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カテゴリー「乗り物

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