誰もが見たことがある「みかんの缶詰」は日本で生まれたものであり、それには日本の缶詰の歴史も詰まっている。
みかんの缶詰は「みかんの薄皮を一瞬で消す」という魔法のような技術が発明されたことで大きく進化した。1877年(明治10年)頃に海外への輸出用の商品として開発されたのが「みかんの缶詰」だった。
当初はみかんの外皮がついたまま缶詰にしていた。その後、上にある画像のような外皮をむいたみかんの缶詰(丸みかん缶詰)が登場したが、評判は低く、全く人気が出なかった。
それは当時のみかんの缶詰では、みかんの薄皮がついてまま入っており、美味しいとは言えなかったためである。その缶詰の作り方は、みかんの薄皮がついたまま丸ごと砂糖で煮るというものだった。そのため、薄皮の繊維が溶け出し、味に渋みがあった。
原因となる薄皮を何とかしたいと思っていたが、解決策はなく、薄皮を一つ一つ手作業ではがして缶に詰めていた時期もある。そんな中で、昭和時代に入ると薄皮を一気にはがせる魔法のような技術が発明された。
それは薄皮のついたみかんの果肉を、温めながら酸性とアルカリ性の水溶液に順につけるという方法である。これらの溶液につけることで薄皮の成分が分解され、はがれやすくなる。溶液につけた後のみかんの果肉を水で洗うと薄皮がきれいにとれる。
この薄皮を一気にはがす方法が発明されたことで、薄皮をはがす処理の効率が劇的に上がり、大量生産が可能になった。そして、渋みもなく美味しくなった「みかんの缶詰」は世界各国で評判となった。1939年(昭和14年)には年間131万缶ものみかんの缶詰が輸出された。
このみかんの薄皮をきれいにとる技術は、スペインや中国など現在みかんの缶詰を製造する様々な国で採用されている。このように「みかんの缶詰」は日本で生まれたものであり、薄皮をはがす技術の発明とともに美味しく進化してきた。
リンク:日本缶詰びん詰レトルト食品協会
2021/10/15
カテゴリー「食べ物」