カニ缶を高級品にした一枚の紙

日本には様々な種類の缶詰があるが、缶詰の中でも特に値段が高いのは「カニ缶」であり、ほぐし身の缶詰でも1缶500円以上する。

タラバガニの缶詰

さらに、タラバガニの脚肉がぎっしり入った高級な缶詰だと1缶4000円以上もする。今では高級品のカニ缶だが、昔の誕生した頃は商品としての価値が他の缶詰に比べて低かった。

日本でカニ缶が開発されたのは1880年(明治13年)頃とされ、その当時は缶詰自体が高級品だった。そんな中でカニ缶は他のイワシ缶やサケ缶に比べて値段が安かった。それは当時のカニ缶には「黒変(こくへん)」と呼ばれるカニの肉が黒い色になる問題があったからである。

カニ缶を加熱処理する際に、カニの身に含まれる硫黄成分が缶の鉄分と反応して硫化鉄となり、これがカニの肉を黒く変色させた。この黒変の問題により当時のカニ缶は味も見た目も悪く、商品価値が低かった。

これを解決したのが一枚の紙であり、現在のカニ缶にも白色の紙が一枚入っている場合が多い。この紙はカニを変色させないための優れもので「硫酸紙(りゅうさんし)」や「酸性パーチ」と呼ばれる。

硫酸紙とは、耐水性や耐久性を高めた紙で、ヨーロッパで開発された。その強い耐水性からダイナマイトを製造する際、火薬から危険な成分が出るのを防止する目的で使用された。その耐水性に優れた硫酸紙をカニの変色防止のために使用した。

この硫酸紙を一枚入れてカニの身を包むことで、カニの身から出る硫黄成分が缶の鉄分と反応するのを防ぎ、黒変の問題を見事に解決した。これにより日本のカニ缶は海外で大人気となり、多くのカニ缶が輸出された。

その後、国内でもこの硫酸紙を使用したカニ缶の需要が高まり、その値段は高くなっていった。硫酸紙という紙を一枚包むだけでカニ缶の価値は大幅に上がった。

なお、今のカニ缶の中には、缶の内側をコーティングして黒変を防止しているものもあり、硫酸紙を必要としない缶もある。その一方で、カニ缶の特別感を演出するために現在でも硫酸紙を使用している缶も見られる。

リンクWikipediaマルハニチロ

2021/10/19

このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリー「食べ物

関連記事