テレビや新聞、インターネットなどでは「岸田首相」と「岸田総理」のように2つの呼び方を見ることができる。2つの違いや由来について確認してみる。
「首相」と「総理」は両方とも、様々な大臣から構成される内閣を代表する人(首長)を呼ぶ言葉で、現在ではどちらも同じ意味である。その違いは「首相」が中国にならった呼び名、「総理」が日本で作った呼び名という点である。
先に生まれた言葉は「首相」である。江戸時代に外国人が日本にやって来た時、外国の政治の代表者をプライムミニスター(Prime Minister:PM)と呼んだ。これを日本語に訳す際に、中国で政治の代表者を意味する「首相」という言葉を当てはめた。つまり、もともと外国の政治の代表者(プライムミニスター)のことを「首相」と呼んだ。
そして、後に「総理」という言葉が生まれた。明治時代に日本でも外国にならって内閣が組織された。内閣の代表者の呼び方を決める時にプライムミニスターを意味する「首相」という言葉に抵抗感を持つ人たちがいた。反対派の意見としては「首相は外国の政治の代表者を意味する」というものだった。
そこで生まれたのが「内閣総理大臣」という言葉である。「内閣総理大臣」は「内閣の総(すべ)てを理(おさ)める」という意味の「内閣総理」と、昔から日本で使用されていた役職名の「大臣」を組み合わせて作った日本独自の呼び名である。
当時、「首相」という言葉は「外国の政治の代表者」を指す時に使用され、「総理」は「日本の政治の代表者」を指す時に使用された。しかし、その後に「首相」と「総理」は同じ意味で使用されるようになった。
それは戦後の国際化に伴い、国の代表者同士が会談する時に相手のプライムミニスターを「〇〇首相」と呼ぶのに対して、日本の代表者を「○○総理」と呼ぶと国のトップ同士であることが分かりにくくなるという問題があったからである。
そこで日本でも「首相」という呼び名が徐々に使われるようになり、現在「首相」と「総理」の2つの呼び名が存在する。ただし、「首相」という呼び名は正式ではないため、国会などの公の場では正式名称の「内閣総理大臣」が使用される。
テレビなどのメディアでは「内閣総理大臣」やそれを略した「総理大臣」や「総理」を使用するほかにも「首相」のテロップ表示を使用する場合もあり、テレビ局やメディアによって使い方は様々である。
リンク:Wikipedia
2024/10/1
カテゴリー「語源・由来」