「咲」という漢字は現在では「花が咲く」のような表現をする時に使用する。この「咲」という字は中国から伝わった字である。
もともと中国では「咲」という字は「花が咲く」の意味では使われていなかった。日本に入って来た時も「花が咲く」とは全く違った意味の言葉として使われていた。
「咲」という漢字は口へんが付いていることからも分かるように「口」と関わりが深く、人のある様子を表した言葉だった。それは「笑う」という意味である。
「咲」という漢字は本来「笑う」を表す言葉だったが、鎌倉時代以降に「笑って口を開く様子」が「花の開く様子」と重ねられて「花が咲く」という意味が加わった。
もともと「咲」も「笑」も「笑う」の意味で使われていたが、「咲」は「咲く」の意味でも使われるようになった。現在でも辞書で「わらう」を引くと「笑う」と「咲う」の両方が表記されている。
ちなみに、女優・武井咲(たけい えみ、1993年~)のように「咲」を「笑」の訓読みの「えみ」と読む場合もある。武井の本名である「咲(えみ)」という名前は「花が咲くように笑みの絶えない子に」という意味に由来する。
また、「春になって、芽が出たり、花が咲いたりして景色が明るく見える様子」を「笑う山」や「山笑う」と表現する。「山笑う」は俳句における春の季語である。
2024/10/14
カテゴリー「語源・由来」