全国に存在する寿司屋の店名には、「寿司」「鮨」「鮓」の3つの漢字が使われている。これらの漢字は使われている地域に特徴がある。
「鮓」の漢字が多く使われるのは大阪である。もともと「鮓」という漢字は発酵した魚を指す字で、8世紀ごろ大阪に伝わった「なれずし」を指して使われた事が由来とされている。現在の寿司は酢飯を用いるが、なれずしは乳酸発酵により酸味を生じさせるもので、これが本来のスシの形態である。
「鮨」の漢字が多く使われるのは東京である。江戸時代になれずしとは違う、江戸で生まれた江戸前の「握りずし」を指して使われた事が由来とされている。握りずしは1829年(文政12年)が文献的初出である。握りずしが誕生すると、たちまち江戸っ子にもてはやされて市中にあふれ、江戸のみならず文政の末には関西にも「江戸鮓」を売る店ができた。
「寿司」の漢字が多く使われるのは京都である。かつて京都ではスシを献上品として朝廷に納めており、「めでたい」という事でこの当て字が使われたとされている。「ことぶきをつかさどる」と書く寿司は縁起がよいもの、祝いの席で食べるものという意味がある。
これら3つの漢字以外にも「すし」と平仮名で表記する事もある。この平仮名はかつて使わざるを得ない状況があり、苦肉の策で生まれた。それは寿司店組合の名称に使われる「スシ」の漢字が都道府県によってバラバラだった事である。
全国で寿司の協会のような組織を作ろうとした時、漢字がバラバラで一つの漢字にする事ができなかった。そこで、平仮名が使われ、「全国すし商生活衛生同業組合連合会」(全国すし連)という全国組織が設立された。みんなが納得する事もあり、平仮名表記の「すし」も使われており、店名としては株式会社喜代村の「すしざんまい」が有名である。
リンク:Wikipedia、全国すし商生活衛生同業組合連合会、すしざんまい
2018/10/17
カテゴリー「食べ物」