駅のホームには自動販売機が置かれ、そこにはお茶や炭酸飲料、ジュースなど様々な飲料メーカーのドリンクが並んでいる。その中にミネラルウォーターがある。
飲料メーカー各社が商品を出しているが、この「FromAQUA(フロムアクア)」というミネラルウォーターは主に駅でしか見かけない。それはこの「FromAQUA」の販売元は株式会社JR東日本ウォータービジネスで、JRが水を販売しているためである。鉄道会社のJRがなぜ水を販売しているのか。
このミネラルウォーターは線路を建設する上で偶然生まれた副産物で、上越新幹線が大きく関係している。1982年(昭和57年)に東京と新潟を結ぶ上越新幹線が開通した。山脈を横断するため、大規模なトンネル工事が行われた。当時山岳トンネルとしては世界最長の22.2kmで、そのトンネル工事の掘削中に発見したのが、思いも寄らない大量の湧き水だった。
その湧き水の量は毎分33トンで、当時作業員が湧き水を飲んで美味しいと評判になった。しかし、商品化には並々ならぬ苦労があった。トンネル内に出た湧き水をくみ取るにはトンネルの外までパイプを通す必要があった。職場の活性化につながるという理由で、その作業をすることになったのが当時の国鉄社員だった。
電車の整備士など専門でもない社員が総動員で約16kmのパイプを敷いた。そんな苦労の甲斐あって1984年(昭和59年)に商品化された。今では年間約2000万本・約20億円も売り上げる大ヒット商品となっている。
現在は2007年(平成9年)にリニューアルされて「FromAQUA」という商品名だが、その前身は1984年(昭和59年)~2006年(平成8年)に発売された「大清水(おおしみず)」という商品名だった。実はこの商品名は湧き水が出たトンネル「大清水(だいしみず)トンネル」からその名が付けられた。「大清水」の読み方が違うが、これは「おいしい水」に掛けて「大清水(おおしみず)」とされた。また、読みに濁点がつかないので、水が「濁っていない」という意味も掛けられている。
この「FromAQUA」のペットボトルには鉄道会社ならではの工夫がある。それはキャップが離れないことである。人の行き来が激しい混雑した駅の移動中に飲む場合を想定したもので、カバンを持っていてもキャップを持たずに済み、キャップを落とさない工夫がされている。
2018/11/2
カテゴリー「乗り物」