和食の盛り付けには縁起を担いだ食材を盛り込むというもてなしがある。例えば、鯛は「めでたい」、昆布は「よろこぶ」などである。
そんな食材の中に、祝いの膳に用いる「祝い肴」として大切にされているのが「黒豆」である。黒豆は「マメに働き、いつまでも若々しく」といういわれを持つ縁起の良い食材だが、黒豆の「縁起のいわれ」は昔は今とは違っていた。
黒豆の「いつまでも若々しく」というゲン担ぎが昔は違った。その理由は、黒豆の見た目が今とは別物だったからである。そこには家庭料理の研究と普及に尽力した料理研究家・土井勝(1921~1995年)が大きく関係している。
昔の黒豆は今とは違って、表面の見た目がシワシワだった。今の黒豆はシワがなくツルツルしている。このシワシワの見た目から出来たゲン担ぎは「シワが寄るまで長生き」であり、「長寿」の願いが込められていた。では、なぜ黒豆のシワが無くなったのか。
その分岐点は明らかになっており、シワが寄らない調理方法を考えたのが土井だった。土井は15年かけてシワの寄らない黒豆の煮方を考案した。そして、その黒豆の煮方を世間に無償で広めた。
シワが出来ていた昔の調理法は、水で一晩戻した後に柔らかく煮た黒豆に調味料を入れるというもの。対して、土井が広めたシワの寄らない黒豆の調理法は、沸かしたお湯に先に砂糖や醤油で味付けをする。その調味料を入れたお湯で黒豆を戻す。これが土井流である。
砂糖や醤油を入れる事による急激な変化が、一番黒豆の皮を引き締め、シワが寄りやすい原因だった。最初から調味料が入ったお湯で煮る事で、黒豆に急激な変化が起きず、シワの無いツルツルした黒豆となる。調理法の違いが黒豆の「縁起のいわれ」まで変えてしまった。
リンク:みんなのきょうの料理、Wikipedia
2018/11/17
カテゴリー「食べ物」