1975年(昭和50年)に発売された『およげ!たいやきくん』は累計475万枚の大ヒットとなった。売り上げは23億円以上に上り、日本で最も売れたシングル曲である。
そんな日本を代表する名曲『およげ!たいやきくん』を巡って、1億4000万円の金銭トラブルが勃発していた。それは消費税の導入以前に「物品税」という税金があり、その物品税がかかるのかどうかで問題になった。消費税が導入されたのは1989年(平成元年)4月のことで、その時まで物品税が存在した。
物品税とは、レコードや乗用車、テレビ、カメラなど、いわゆる「ぜいたく品」を買った時に課税される税金である。『およげ!たいやきくん』が「歌謡曲」として認定された場合には15%の物品税がかかる。一方、「童謡」の場合には非課税となり税金がかからない。この税金を巡ってレコード会社と国税庁の間で論争が起きた。
当時の新聞報道によると、少しでも国庫の赤字を埋めたい国税庁が異例の売り上げを記録したレコードに目をつけ、課税を要求したのではとの見方もあった。散々揉めたこの問題は、最終的に国税庁が「童謡」として認定し、物品税1億4000万円は非課税となった。一説によると、レコードの付録だった「ぬりえ」が子ども向けの歌というレコード会社の裏付けとなり、童謡として認定されたと言われている。
ちなみに、『およげ!たいやきくん』を歌った子門真人は曲の買い取り契約で、歩合制の印税契約ではなかったため、23億円以上売り上げたのにレコード収入はたったの5万円だった。吹き込み当時、アルバイトで曲を吹き込んだ子門はこの曲が大ヒットするとは思わなかった。子門には後にヒット記念としてレコード会社から100万円と白いギターが1本贈られたという。
また、『およげ!たいやきくん』にはモデルになったお店がある。それは東京・麻布十番にあるたい焼き店「浪花家総本店」である。もともと今川焼きを売り始めたが売れず、亀の形の「かめ焼き」も売れなかったが、「めでたい」にちなんで、さらに庶民の口になかなか入らない高級品である鯛の型で焼くことを考案し、売り出したのが始まりとされている。
2019/1/23
カテゴリー「歴史・文化」