愛知県の中部国際空港「セントレア」には全国でもここでしか見ることのできない飛行機がある。それが「ドリームリフター」(Dream Lifter)である。
ドリームリフターはアメリカの世界最大のジェット機メーカー「ボーイング社」が開発した機体である。中古のボーイング747-400を改修・改造したその機体は全長72mもあり、一般的なジェット機に比べてはるかに大きな機体で、途中から大きく膨らんだ太いボディが特徴である。この飛行機は世界に4機しかない。
これは何を運ぶための飛行機なのか。ドリームリフターの機種名は「ボーイング747LCF」で、末尾のLCFはLarge Cargo Freighterの略で、大型貨物輸送機という意味である。この飛行機は胴体後部が開き、そこから入れられる大きな筒状の物体を運んでいる。
この巨大で特殊な飛行機「ドリームリフター」が運ぶのは大きな「飛行機のパーツ」である。日本で飛行機のパーツを作っているのはバイクや船舶を製造する川崎重工業で、愛知県にある工場には直径約7mの筒状で壁面に窓が並ぶ物体がある。それはジェット機の胴体の部分である。
ドリームリフターは最新ジェット機「ボーイング787」の胴体や主翼、エンジンなどの大型部品を分解せずに運ぶ専用機である。巨大なジェット機を1ヵ所で製造するには膨大な敷地と人件費が必要となる。そこでボーイング社は胴体や主翼など各パーツを高い技術を持つ世界中の企業と分業することでコストを抑えている。
日本の川崎重工はビジネスクラスや搭乗口のある胴体の前半部分を担当している。各国で製造されたパーツは完成したらドリームリフターでアメリカに輸送し、1機のジェット機として組み立てられる。
もともと飛行機のパーツは船で輸送していたが、近年ドリームリフターにより空輸に変わった。それは飛行機の胴体パーツの大型化により船では運べなくなったことが理由である。
従来のアルミ製の胴体には水平方向の継ぎ目があったが、ボーイング787にはパーツの継ぎ目がなく強度が非常に高い。これを可能にしたのは日本が開発した「炭素繊維複合材」で、鉄の10倍の強度を誇る。
この炭素繊維複合材を飛行機の胴体の型に合わせ何層にも重ねて成形し、巨大なオーブンのような装置により高温・高圧で約半日加熱することで、継ぎ目のない筒状のボディが完成する。継ぎ目がないことで強度が増し、窓の面積が30%も拡大した。さらに炭素繊維複合材は錆びないため、従来の金属の飛行機ではできなかった客室内の強い加湿も可能になり、飛行機特有の乾燥した空気が改善された。
リンク:セントレア、ANA Trivia、Wikipedia
2019/3/12
カテゴリー「乗り物」