自衛隊には戦闘を行う部隊だけでなく、「給養員」という料理を作ることを専門とした隊員など様々な職種の人たちがいる。
ちなみに、給養員は普段は基地ごとに配置され、自衛官の日々の食事を任されている。美味しい食事を作る給養員の腕前は、高級店さながらの料理も作れる凄腕のシェフである。また、給養員は地震などの災害時には炊き出しを作り、被災者に温かい食事を提供するなどの活動も行っている。
そんな自衛隊員の中には引き算の訓練をする人たちがいる。小学校で行うレベルの引き算を訓練に取り入れているのは「航空自衛隊」で、極限状態での意識状態をチェックするための訓練である。
引き算訓練を行っている場所は、気圧を人工的に低く設定した訓練室である。そこにはヘルメットを着けた航空自衛隊員の姿がある。航空自衛隊のパイロットと言えば、強靭な肉体を保持する人たち。旋回飛行で体にかかる重力は最大9Gにもなる。ジェットコースターに乗った時の2倍以上の重力に耐えることもできる。しかし、彼らには重力以外にも大きな難題があり、それが低圧状態である。
引き算は低圧訓練の一環として行われ、待機中の隊員の口には酸素マスクが着けられている。訓練開始の合図とともに酸素マスクを外し、皆一斉に引き算を開始する。
その訓練の環境は富士山の約2倍の高さ7,600mで、酸素量は地上の約3分の1。一般の人なら低酸素で5分と持たずに倒れてしまう環境である。そんな低圧の状態で体にどのような症状が出るのかをパイロットが体験するための訓練である。
その計算式は表の上の数字から表の左の数字を引くというもので、「10-5」や「12-7」など小学校低学年で習う初歩的なもの。しかし、最初は間違えずに計算できるが、最後のほうになると計算間違いをしたり、数字を正確に書けない状態になる。普段から肉体と精神を極限まで鍛え、過酷な訓練を乗り越えているパイロットでさえ、最後まで間違えずに計算できる隊員は極わずかである。
引き算は足し算よりも少しだけ難しい。その少し難しい引き算は低酸素状態で思考能力を判断するのに最適なのである。
リンク:防衛省・自衛隊
2019/3/29
カテゴリー「生活・科学」