スーパーなどで乳製品に「小岩井」と書かれた商品を見かける。小岩井の商品には牛乳やヨーグルト、バター、チーズなど数多くある。
この小岩井という名前は地域の名前ではない。また、小岩井という人物の名前でもない。小岩井農場があるのは岩手県岩手郡雫石町である。この農場は日本最大の民間総合農場で、東京都に本社を置く小岩井農牧株式会社が経営している。
小岩井は人名ではないと書いたが、実は人の名前の一部であり、「小岩井」は創業者3人の名前の最初の文字を取ったものである。「小」は当時の日本鉄道会社の副社長だった小野義眞(おの ぎしん、1839~1905年)、「岩」は三菱社社長の岩崎弥之助(いわさき やのすけ、1851~1908年)、「井」は鉄道庁長官の井上勝(いのうえ まさる、1843~1910年)である。小岩井は三菱との関係が密接であり、現在も本社は東京・丸の内の三菱ビルにある。
1890年(明治23年)に日本鉄道が東北本線を盛岡駅まで延伸開業し、翌1891年(明治24年)に小岩井農場と名付けられた。農場と言っても当時はその地域一帯が、岩手山からの火山灰が堆積し冷たい吹き降ろしの西風が吹く不毛の原野だった。そのため、土壌改良や防風・防雪林の植林などの基盤整備に数十年を要した。
1938年(昭和13年)より小岩井農牧株式会社として事業活動を行っており、現在では酪農・種鶏・たまご・山林・環境緑化・技術研究・観光・農場商品販売などの事業を行っている。また、最初に挙げた乳製品は小岩井農場を母体とする小岩井乳業株式会社が製造・販売しており、1976年(昭和51年)に分離・独立しキリングループの一員となっている。
2019/8/27
カテゴリー「語源・由来」