「ちはやぶる/ちはやふる」(千早振る)は、『小倉百人一首』の在原業平の歌や、古典落語の演目の一つとして有名である。
在原業平(ありわら の なりひら)は、平安時代の貴族・歌人で、昔から美男の代名詞とされ、『伊勢物語』の主人公のモデルとされる。そんな在原業平の代表歌として、「ちはやぶる 神代もきかず 龍田川 からくれなゐに 水くくるとは」という歌がある。
この歌は「色々と不思議なことがあったという神がいた時代にも 聞いたことがないほど 紅葉で龍田川が鮮烈な紅に染まって驚きだ」という意味で、紅葉に彩られた龍田川の美しさを詠んだ歌である。
「ちはやぶる」(ちはやふる)は「神」または「宇治」にかかる枕詞で、ここでは「神代も聞かず」を導き、上句は「神代にも聞いたことがない」という意味である。
そして、「ちはやぶる」の「ち」は雷(いかづち)の「ち」と同じで「激しい雷光のような威力」を、「はや」は「速し」で「敏捷」を、接尾語の「ぶる」は「振る舞う」を意味する。これらを語源として、「ちはやぶる」は「荒々しい」「勢いが激しい」という意味の言葉である。そこから恐ろしい「神」の枕詞として使われるようになった。
「ちはやぶる」という言葉は鎌倉時代以降に「ちはやふる」と濁らなくなり、「昔のこと」という意味でも使われるようになったとされる。
「ちはやふる」は、作者・末次由紀による競技かるたを題材にした少女漫画のタイトルにもなっており、この漫画を原作としてテレビアニメ、実写の映画化もされている。このタイトルの「ちはやふる」も上記の在原業平の歌に由来する。
2019/9/11
カテゴリー「語源・由来」