寝ている時、目覚まし時計が鳴ると人は目が覚めるが、家族が普通の声の大きさで話しかけても目が覚めない。
実は人間は寝ていて意識がない状態でも音が聞こえている。寝ている時でもその音は耳の鼓膜を刺激し、脳に届いている。しかし、音によってはスヤスヤと寝たままだったり、ハッと目が覚めたりする。これは脳が音の種類を聞き分けているためである。
例えば、家の近くで道路工事が始まると、最初はうるさくて眠れないが、そのうち慣れてきて眠れるようになる。これは「聞き慣れた音」を「安全」だと判断しているためである。高速道路沿いや線路沿いなどで暮らす人が、外の音を気にせずスヤスヤ眠れるのもこれと同じである。
一方、物が割れる音など「聞き慣れない音」は脳が「危険」だと判断して目が覚める。人間は寝ている間も音を聞き、「安全 or 危険」の区別をしている。これは人間がもともと自然の環境の中で生きてきた動物だからである。
動物にとって自然の中で寝ることは、いつ襲われるか分からない死と隣り合わせの状態である。天敵に気付かずに寝ているのは命が危険な状態であり、少しでも早く起きて逃げなければならない。動物にとって音は命の危険を感知するための重要な情報であり、寝ていても脳に音が届いている。
しかし、どんな音にでも反応していたら眠れないため、音によって安全か危険かを判断し、少しでも睡眠を確保するように脳が進化したと考えられている。寝ている人に話かけても起きないのは、脳がその声を「安全な音」だと判断しているためである。
2019/8/30
カテゴリー「生活・科学」