人は疲れた時、お腹いっぱいになった時、退屈した時など、眠くなるとあくびをする。しかし、あくびが出る理由はなかなか難しい。
あくびが出るのは脳の酸素が足りないためだという説がある。あくびは一種の深呼吸のようなもので、血液中の酸素が不足している時に、あくびをすることで空気を吸い込み、酸素を補給するという考えである。
しかし、日常生活で人が酸素不足になることはほとんどない。また、あくびにより体内に取り入れられる空気の量は通常の呼吸と比べてもそれほど多くなく、実験により血中の酸素濃度が上昇しないことが確認された。そのため、脳の酸欠によりあくびが出るという説は、現在では支持されていない。
もう一つの説として、眠くなった時にあくびが出るのは脳の温度を下げ、適温に保つためだという説がある。脳の温度は通常36~37℃程度に保たれている。しかし、仕事や勉強などで脳が疲れたり、ご飯をいっぱい食べて満腹になると、脳は休息状態に入り、血流量が減少し脳の温度が低下する。この時に感じるのが眠気である。
しかし、眠ってはいけない時に眠気が襲ってくる時がある。そんな時、脳は働きを活発にするために血流量を増加させる。血流量が増加することで脳の温度は上昇し、眠気を覚ますことができる。しかし、ここで問題が発生し、人の脳は温度が39℃以上になると脳機能が低下してしまう。そこで脳を守るために温度を下げようとして出るのがあくびである。
あくびをした時、口から空気を吸い込む。その空気がのどの近くにある血管や血液を冷やす。また、あくびをした時、のどの筋肉が血管に圧力をかけ、冷えた血液を押し上げる。冷えた血液が脳に送られ、温まった血液が脳から排出されることで、脳の温度を下げて適温にしている。
眠くなった時に出るあくびは、眠らないように我慢をして頑張った結果、上昇した脳の温度を下げようとしている。あくびは眠気と戦っている証とも言える。ただし、この脳の温度を下げるためにあくびが出るという説も定説とは言えないようである。あくびは他人に「うつる」ことについても原因がよく分かっておらず、あくびにはまだ謎が多いようである。
2019/9/12
カテゴリー「生活・科学」