「鉄(iron)」は道具を作る材料として古くから利用され、人類の文明の基礎を築いてきた。そんな鉄は野外で風雨にさらしておくと錆びる。
鉄は原子番号26の元素で、元素記号は「Fe」、金属元素の一つであり、地球の地殻の約5%を占める。鉄が自然界において錆びるのは当たり前のことである。日常生活で私たちが使用している鉄は加工されたもので、その鉄は元の姿に戻ろうとして錆びる。
鉄の材料は鉄鉱石(iron ore)で、鉄鉱石は自然の状態では赤茶色で、錆びた状態である。「錆(rust)」とは鉄と酸素が結び付いた状態で、「酸化鉄(iron oxide)」のことである。私たちが普段目にする鉄は、製鉄所で加工されたピカピカの状態のものである。このように加工された物質は元の自然の状態に戻ろうとする性質がある。
製鉄所にある高炉では、鉄鉱石を約2000度にもなる高温で溶かして鉄を取り出している。高炉には鉄鉱石と一緒にコークス(coke)と呼ばれる石炭を材料とした炭素の塊が入れられる。鉄鉱石とコークスの2つを高炉の約50mの高さから、高温になった酸素ガスが下から吹き上げる高炉の中に落とす。
上から落とされた鉄鉱石とコークスは熱風を受けながら約50mの距離を数時間かけてゆっくりと落ちて行く。この時、高温の酸素ガスによってコークスが燃え、さらにその熱で鉄鉱石が溶け、ドロドロになりながら落ちて行く。鉄鉱石が溶けるまでには数時間かかるため、高炉には50mもの高さが必要となる。また、製鉄所の高炉はコークスが燃える熱を冷まさないようにするため、24時間365日休むことはない。
鉄鉱石が鉄になる理由は、まず高温の熱風によってコークスが燃える際に、酸素とコークスの炭素が結び付いて一酸化炭素などの熱いガスが発生する。一酸化炭素はより安定した状態の二酸化炭素になろうとして、酸化鉄の酸素と結び付き、鉄だけが残る。これが製鉄所で鉄ができる仕組みである。
酸素と結び付いている状態が自然である鉄は、自然界と同じ状態に戻ろうとする。つまり、再び酸素と結び付いて酸化鉄となり、錆びるのである。製鉄所で製品として作られる鉄板などの鉄は、表面をコーティングすることで酸素に触れて錆びないようにしている。
鉄は水に触れると錆びやすい。これは鉄は水に触れると表面から溶けていき、溶けた鉄と水の中にある酸素が結び付く。この状態で水が蒸発すると酸化鉄になり、これが錆である。さらに、塩水が錆びやすいのは塩は水の蒸発を防ぐ性質があり、鉄が水中の酸素と結び付く時間が増えるためである。また、錆防止のフッ素スプレーは、フッ素が水をはじく性質を利用して、鉄の表面に水が溜まりにくくして錆を防いでいる。
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2019/10/7
カテゴリー「生活・科学」