「位置について 用意」は山田さんが決めた

「位置について よーい ドン」は、陸上競技などのスタート合図として誰もが慣れ親しんでいる言葉である。この合図を決めた人がいる。

スタート合図

「位置について 用意」が使われるまでのスタートの掛け声は、方言も含めてバラバラだった。例えば、1883年(明治16年)の開成学校の運動会では「いいか ひい ふう みい」の掛け声で傘を振り下ろす合図だった。しかし、タイミングが合わせづらいということで浸透しなかった。

1913年(大正2年)の第1回日本陸上競技選手権大会では「支度して 用意 ドン」の合図だった。この他にも「腰を上げて 待てぇ ドン」や「がってん承知 ドン」「おんちゃなケツ上げぇ ドン」などがあったという。しかし、どれもいまいちだということで、日本陸上競技連盟は1927年(昭和2年)にスタート合図を一般公募した。

驚くことに当時、英語の「On your marks, Set」のスタート合図も使われていて、この英語に代わる日本語の合図を求めて募集がされた。そして、これにより山田さんの「位置について 用意」が選定された。

「位置について 用意」の合図を考えたのは、東京・神田に住んでいた山田秀夫さん(当時19歳)だった。この新しい用語は、1928年(昭和3年)3月4日の東京日日新聞で発表された。ところが、当時の新聞には秀夫さんではなく、山田敏夫さんの名前で掲載された。これはスタート合図の応募は1人につき1つと決められていたためである。

スタート合図の案を2つ応募したかった秀夫さんは、弟の敏夫さんの名前を使って、2人の名前でそれぞれ1つずつ応募した。その結果、弟の敏夫さんの名前で応募した「位置について 用意」が採用され、新聞にも敏夫さんの名前が掲載された。秀夫さん本人の名前で応募したのは「位置につけ 用意」だったという。

現在では、世界陸上競技選手権大会やオリンピックなどの国際競技会において、スタート合図は英語に統一されており、すでに上にも記載した「On your marks(位置について), Set(用意)」が使われている。

リンクNIKKEI STYLEWikipedia

2019/10/10

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カテゴリー「スポーツ

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