調味料「ケチャップ」の歴史

「ケチャップ」(ketchup)とは、野菜・果実・キノコ・魚介類などを原料にした調味料である。トマトを用いたものは「トマトケチャップ」と呼ばれる。

トマトケチャップ(カゴメ)

日本では単に「ケチャップ」と言うと「トマトケチャップ」のことを指すが、もともと「ケチャップ」とは「魚醤」(ぎょしょう)のことである。また、「魚醤」は、秋田県では「しょっつる」(塩魚汁)、タイでは「ナンプラー」とも呼ばれる。

トマトケチャップは、明治時代にアメリカから日本に渡って来たものである。それより以前のケチャップは現在の魚醤に当たる。魚醤とは、魚介類を塩漬けにして発酵させて造る液体の調味料で、中国が発祥である。「ケチャップ」という名前は、魚醤を意味する中国南部の昔の方言が語源とされる。

これが中国から東南アジア、イギリス、アメリカに渡り、日本に入って来た。現在では、ケチャップがトマトケチャップを意味するのは、日本と同じように世界的にも同じ傾向にある。しかし、ケチャップが魚醤やそれに由来する調味料であった名残が各国に残っている。

例えば、インドネシアでは「kecap」などと表記され、大豆や小麦を材料にした調味料で黒褐色をしている。インドネシアではこの調味料を「ビーフン・ゴレン」など多くの炒め物に利用する。

また、イギリスのケチャップ(ketchup)はキノコを材料とした調味料で褐色をしている。18世紀初め、植民地の東南アジアからイギリスにケチャップが渡り、穀物の代わりにマッシュルームなどのキノコやクルミを塩漬けにしてケチャップが造られた。シチューやパイ、パスタなどの家庭調理の味付けにキノコのケチャップが使用される。

トマトケチャップはイタリアが発祥という説もあるが、トマトケチャップが大々的に造られるようになったのはアメリカである。1700年代末~1800年代初めにケチャップとトマトは同時期にアメリカに伝わった。当時のトマトは酸味が強く、そのまま食べることはほとんどなかった。そこで、ケチャップの材料として使用され、1876年に世界初のトマトケチャップがハインツ社より販売された。

トマトケチャップ(ハインツ)

すると、ハンバーガーやホットドッグとの相性がよく、アメリカ中で大人気となった。アメリカでは法律に「ケチャップの原料はトマト」と定義されているほど定着している。そして、このトマトケチャップが明治時代に日本に伝わり、戦後、アメリカの食文化と共に日本中へ広まっていった。

現在では、ケチャップの発祥である中国でも、トマトケチャップが酢豚や魚のトマト煮込み、トマト鍋などの料理に使用される。もともと魚介類を材料とする「魚醤」であった「ケチャップ」は、世界を一周して主にトマトを材料とする「トマトケチャップ」となった。

リンクWikipediaカゴメハインツAmazon

2019/11/20

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カテゴリー「食べ物

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