現在、世界的にキャッシュレス化が進んでいるが、世界で一番キャッシュレス化が進んでいる国はアフリカの「ケニア」である。
上のグラフは、一般社団法人・日本キャッシュレス化協会(Japan Cashless Association:JCA)が2019年に発表した世界各国のキャッシュレス指数である。キャッシュレスの利用回数やモバイルマネー給与受取率など9つの指標から算出した指数で、数字が高いほどキャッシュレス化の進んだ社会であることを表している。
日本は調査を行った28ヵ国中27位であり、キャッシュレス化の後進国である。一方、この調査でキャッシュレス化が最も進んだ国は「ケニア」であった。なぜケニアはキャッシュレス普及率が高いのか。
その理由は、一人の大学生が考案した画期的なアイデアにあり、これにより国民の生活は大きく変わった。
ケニアでは銀行口座を持つには管理費が必要である。貧富の差が激しいケニアにおいて、人口約5000万人のうち約7割もの人が銀行口座を持っていない。そのため、水道料金や電気料金も全て現金払いだった。
出稼ぎで田舎から都市部に出てきても、送金する方法がないため、地元に戻って現金で手渡しをしていた。そんな日本では考えられない不便な生活を送っていた。
そんな中、ケニアの一人の大学生が革命を起こす。2007年にケニアでは携帯電話が一気に普及した。それと同時にケニアの学生がキャッシュレスシステム「M-PESA」(エムペサ)を開発した。
M-PESAはお金を窓口で支払い、携帯にチャージするだけで、遠く離れた家族などに送金できるシステムである。これはインターネットではなく、電話回線を利用したもので、インターネット環境の整っていないケニアの大自然の中でも利用できる画期的なシステムだった。
スマートフォンは必要なく、携帯電話があればよい。また、M-PESAは手数料がとても安く、銀行口座を持たない約7割の貧困層の人々がこぞって登録した。その登録も簡単で、電話番号と国民IDがあれば誰もが気軽に利用することができた。
公共料金や学費の支払い、給料の受け取りなど様々な「お金のやり取り」が可能であり、今では富裕層の人々にも浸透した。そして、給与をモバイルマネーで受け取る比率が世界1位になるなど、ケニアは一気にキャッシュレス大国へと成長し、世界で最もキャッシュレス化が進んだ国となった。
2019/12/25
カテゴリー「歴史・文化」